サイトウ・メモリアルアンサンブル

サイトウ・メモリアルアンサンブルのご紹介

左から斎藤民夫、内藤景子、斎藤章一、内藤貴司、増井裕子、増井咲


私たちは、小津安二郎作品の映画音楽を担当した作曲家・斎藤高順の遺族を中心に室内楽ユニット 「サイトウ・メモリアルアンサンブル」を結成し、 2015年の秋より小津映画音楽イベントを開催しております。

2012年、英国映画協会発行の映画専門誌「サイト&サウンド」によるランキングで、世界の映画監督358人が20世紀における最も優れた作品に『東京物語』を選出しました。それ以降、世界の三大国際映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネチア)でもたびたび上映されるなど、ヨーロッパにおける小津人気は揺るぎないものとなりました。現在、小津作品の研究・分析は国内外で進められており、小津映画音楽への注目度も徐々に高まりつつあります。

斎藤高順は、小津監督の代表作『東京物語』から監督の遺作となった『秋刀魚の味』まで、7作品の映画音楽を手掛けました。斎藤家には、小津作品の主題曲のみならず劇中で使用された音楽の自筆譜が、ほぼ映画が公開された当時のままの状態で保管されています。

『東京物語』以前は、サウンド版の時代からトーキー作品の前半まで、伊藤宜二と斎藤一郎というベテラン作曲家が音楽を受け持ちました。両名とも、小津映画の黄金期を陰から支えた名バイプレイヤー的存在で、「音楽は決して目立ってはいけない」という小津監督の厳格な要求を忠実に守り抜いた作風と言えるでしょう。

斎藤高順も小津映画音楽の伝統を継承しつつ、小津監督の音楽的嗜好を巧みに取り入れ、決して前面に出ることはないけれど、映像をより一層効果的に引き立てる音楽を提供し続けました。その辺りの経緯や小津監督とのやり取りなど、斎藤高順が遺した資料を元に、それぞれの音楽が誕生した背景などのエピソードも、生演奏の合間にご紹介いたします。