ブラスバンド・プレー・ブラス・ロック|BRASS BAND PLAYS BRASS ROCK

LPレコード~デジタル変換シリーズ③
ブラスバンド・プレー・ブラス・ロック|BRASS BAND PLAYS BRASS ROCK
東芝EMI株式会社

編曲) 岩井直溥
指揮者) 斎藤高順、進藤潤
演奏) 航空自衛隊航空音楽隊
ゲスト) 市原宏祐(T.Sax)、羽鳥幸次、村田文治(TP)、新井英治(Tb)直居隆雄(E.G)、寺川正興(E.B)石川晶、須永ひろし(Dr)

〈SIDE 1〉
1.イントロダクション|INTRODUCTION (T.Kath)……(6’50″)
2.ゲット・イット・オン|GET IT ON (B.Chase)……(2’56″)
3.黒いジャガー|THEME FROM “SHAFT” (I.Hayes)……(2’58″)
4.スーパー・フライ|SUPER FLY (C.Mayfield)……(4’04″)
5.スピニング・ホイール|SPINNING WHEEL (D.C.Thomas)……(2’22″)
↓SIDE 1の音源↓

〈SIDE 2〉
1.オープン・アップ・ワイド|OPEN UP WIDE (B.Chase)……(4’26″)
2.クェッション ’67 ’68|QUESTION 67 AND 68 (R.lamm)……(3’40″)
3.ランカスター・ゲイ卜|LANCASTER GATE (R.Erans)……(3’39″)
4.エンド・ホエン・アイ・ダイ|AND WHEN I DIE (L.Nyro)……(4’19″)
5.ハイ・ディ・ホー|HI-DE-HO (G.Goffin C.King)……(4’17″)
6.アクエリアス|AQUARIUS (G.MacDermot)……(5’27″)
↓SIDE 2の音源↓

このレコードの出来るまで
日本ではシンフォニー・オーケストラの奏者がジャズを演奏することは殆どない。事実そうした奏者はジャズが演奏が出来ないことが多いし、またジャズは自分達とは別の世界の音楽と考えていることが多い。しかしアメリカでは管楽器の奏者は必ずクラシックもまたジャズも演奏出来るよう教育きれており、特に最近のアメリカの音楽大学に学ぶ若い学生達にその傾向は一そう強い。そのため音楽大学にジャズの講座を設けるのはもう常識となっている。
私自身もイース卜マン音楽学校の学生達がある晩24名編成の強烈なロック・バンドを演奏するのをきいた(その中のトランペット奏者の一人は女子学生だったが、全く男子におとらずがんばっていた)が、翌日その連中がオーケストラに入ってモーツァルトのシンフォニーを演奏していた。それは全く自然で何の違和感もなく行われている。そうしたアメリカの教育や演奏活動は全くクラシックやジャズを区別せず、一つの音楽として受けとめ、また聴衆に輿えている。
こうした活動は当然ジャズの奏者の中に優秀なクラシックのバック・グラウンド、つまり正統的な音楽教育をうけた若者を送りこむこととなり、その結果として生れたのが、ブラス・ロック・グループといえよう。
ブラス・ロック・グループを代表する「プラッド・スエット・エンド・ティアーズ(血と汗と涙)」や「シカゴ」や「チェイス」はそうした特色のあるグループで、そのメンバーの殆んどはイーストマン、ジュリアード、デュポールといったアメリカの一流の音楽学校の出身者である。
したがってこれらのグループの特色はまず音楽的な力を十二分に持っていること、つまり、演奏技術も、作曲や編曲のテクニックも充分あり、かつ音楽的素材に対する知識や感覚がすぐれていることがあげられる。
それまでロック・グループのシンボルであり、中心であったエレキ・ギターの単調さから一歩進んで、管楽器のアンサンブルを主体とした強烈でシャープで、しかも色彩豊かなひびきを全面的に打出した演奏を導きだした。したがって、もちろんヴォーカルの持つ要素も忘れることは出来ないが、演奏の中心は管楽器を主体においた、器楽としてとらえることが出来る。
さてこうしたブラスを主体とするロック・グループのサウンドは、その拡大された編成である吹奏楽にマッチしていることはいうまでもない。
そのブラス・ロックをビッグ・ブラスの編成で演奏しようという試みはすでに以前からこのレコードを吹込んだ航空音楽隊の手で行われていた。府中の第5空軍軍楽隊と常々交歓してアメリカン・ジャズのフィーリングを学んでいる上に、若い年令構成のこのバンドにはうってつけの試みでもあった。
今回のレコーディングではそれに石川晶とカウント・バッファローのメンバーを中心にトランペット2(羽鳥幸次他1名)、トロンボーン1名、テナー・サックス1名(市原宏祐)の4名の管楽器奏者とエレキ・ギター、エレキ・ベース、ドラム各1合計7名のスタジオ・ミュージシャンを加えて一層強烈な効果をあげている。
更にそれを発揮させる良いアレンジャー、岩井直溥氏をえて、その試みは全く完全なものとなった。
それがこのアルパムの生れた理由であり、ロック・ファンを必ずや満足させるであろうビッグ・ブラスのだいご味を十二分に満喫させてくれるに違いない。

《曲目解脱》
★ Introduction
シカゴのデュポール大学の出身者を中心に編成された「シカゴ・トランジット・オーソリティ」は名プロデューサー、ジェームス・ガルシオに見出され1969年1月20日から月末にかけてニュー・ヨークのCBSのスタジオで、そのファースト・アルバム(二枚セット)の録音を行った。そのトップの曲がこれで、すべての人々のシカゴとの出会いとなった曲といえる。
★ Get It On
「黒い炎」とよばれるこの曲はウディ・ハーマン楽団のリード・トランペット奏者として活躍し、現在4本のトランペットを中心に編成したロック・バンド、チェイスのリーダー、ビル・チェイスの作品である。昨年来日してレコード以上にエキサイ卜したトランペットをきかせたチェイスについては説明の必要もあるまい、中間部でトランペットが追いかけるのはまさにチェイスの別の意味“追跡”そのものである。
★ Theme From “SHAFT”
1972年MGM映画制作の「黒いジャガー」(原題シャフト)のテーマ音楽。この映画もブラック・シネマで、ニュー・ヨークに住む黒人の私立探偵ジョン・シャフトの活躍をえがくアクション映画で、作曲者はアイザック・へイズ。ヘイズにとっても映画音楽はこの作品がはじめてであった。
★ Super Fly
1972年度のワーナー・ブラザースの作品で黒人を主人公とした、いわゆるブラック・ムーヴィー「スーパー・フライ」のテーマ音楽の一つ。ニュー・ヨークのハーレムに生活する黒人を画いたもので、麻薬をたねに一もうけをたくらむ“牧師”とよばれる男を中心に画いた映画で、その麻薬を売りさばく組織の名が「スーパー・フライ」で、それが映画のタイトルになった。音楽はソウル界の第一人者とよばれるカーティス・メイフィールドの作曲で、このシカゴ生れ31才のメイフィールドにとって映画音楽はこの作品がはじめてであった。
★ Spinning Wheel
ブラス・ロックの先駆者的存在で、しかも技術的にも、音楽の素材にしても一番しっかりしているグループとしてアメリカ人がドン・エリスのオーケストラと並んで好きなのがB.S.Tのグループである。69年にリリースされたB.S.Tのセカンド・アルバム「血と汗と涙」はゴールド・ディスクとなりグラミー賞を三部門で得たが、そのアルバムのB面のトップがこの曲であった。
★ Open Up Wide
この曲はチェイスのアルバムのオープニングをかざる曲で、歌詞はなく、楽器だけで演奏される。
★ Question 67 AND 68
この曲シカゴのファース卜・アルバムの中の曲で、一枚目のB面の卜ップにきかれる。当時のアメリカの社会への質問であり、彼等自身の演奏を生みだす疑問でもあったのだろう。
★ Lancaster Gate
ウディ・ハーマン・オーケストラのアレンジャーをつとめるリチャード・エヴァンスのオリジナルで、スコットランド風な味をもっている曲。
★ And When I Die
この曲もB.S.Tのセカンド・アルバムのA面第5曲にディック・ハリガンのアレンジで録音されていた。
★ HI-DE-HO
B.S.Tのサード・アルバムはセカンド・アルバムのあと一年半以上の準備期間をへて制作されたが、そのトップをかざっていたのがこの曲で、ニュー・ヨークの“ザ・マンハタン・ブロー~ワイド・コーラス”をフューチャーして演奏されていた。
★ Aquarius
センセーショナルな話題を提供した異色反戦ミュージカル「へア」の中の曲。「輝く星座」と訳されることが多いが、実は主人公の生れた星座をあらわしている。
(秋山紀夫)

Translate

category

ページ上部へ戻る
Translate »