2024年11月10日(日)に開催された、静岡市民バンド「コンセール・リベルテ」の第72回定期演奏会に出演しました。前日のリハーサルにも参加するため、9日(土)の午前中には東京を出発し、東名高速道路で静岡を目指しました。
私は、当日のパンフレットに掲載するプロフィールや曲紹介の執筆を受け持ちましたが、斎藤家のことや斎藤高順生誕100周年記念企画のこと、斎藤高順とコンセール・リベルテの関係などについて、ステージ上で話して欲しいということになり、私も他の出演者同様前日に会場入りしました。当日お話したことは、概ね次のような内容でしたが、持ち時間が限られていましたので、以下に多少付け加えて解説します。
斎藤高順とその家族について
斎藤家は5人兄妹で、私を除く4人はプロの演奏家です。そのパートナーや子供たちも含めると、現在10人の演奏家がおりますが、つい先月結婚式を挙げた四男潔と中村めぐみの長女みゆきの夫もプロのホルン奏者(松原秀人)で、これで総勢11人になりました。本日の出演者は、斎藤家の四男潔(オーボエ)、潔の妻中村めぐみ(クラリネット)、潔とめぐみの次女斎藤ちあき(バスクラリネット)、長女景子の夫内藤貴司(ホルン)の4名です。なお、パンフレットには紙面の都合で従妹の斎藤葉(ハープ)の掲載を割愛しておりますのでご了承ください。
家族のエピソード
2015年から、兄妹たちに参加を呼びかけて、父の作品を中心としたライブイベントを企画・開催しています。昨年は小津安二郎監督生誕120年ということで、小津映画音楽を作曲した父の作品を中心に、オーケストラによるコンサートを開催し、斎藤家の演奏家10人がはじめて全員同じステージに立ちました。また、今年の9月27日(金)には、北とぴあつつじホールで『浮草物語』活弁シネマコンサートを開催し、斎藤家からは長男章一(チェロ)、三男順の妻はがみえ(ヴィオラ)、四男潔の妻中村めぐみ(クラリネット)、長女内藤景子(ヴァイオリン)の4名が出演し、大変好評を博しました。これらの企画・プロデュースは、次男の私が担当しています。
今回斎藤作品を特集することになった経緯
義理の弟内藤貴司は静岡出身のホルン奏者で、本日の演奏にも参加しておりますが、貴司の義理の妹さんが、コンセール・リベルテのフルート奏者内藤陽子さんということもあって、陽子さんに色々ご相談させていただきました。陽子さんはじめ、コンセール・リベルテの皆様にご協力いただいて、今回の企画が実現しました。皆様、本当に有難うございます。
斎藤高順とコンセール・リベルテの接点
コンセール・リベルテの生みの親とも言える岩井直溥氏と父はほぼ同世代(岩井氏が1歳上)で、同時期に東京音楽学校(現東京芸大)に通っていましたが、当時は戦争中で岩井氏は朝鮮半島へ出征、父は陸軍戸山学校軍楽隊に入営し、在学中にはあまり接点がなかったようです。卒業後は、岩井氏は主にジャズのアレンジやプレイヤーとして活動するようになり、一方父はラジオドラマの音楽等を作曲していく中で、小津安二郎監督に起用されて映画音楽の世界へ入っていきます。父が吹奏楽作品を手掛けるようになったのは1967年頃からで、すでに吹奏楽の世界で活躍中だった岩井氏とは、お互い吹奏楽コンクールの審査員として度々顔を合わせるようになって、二人は意気投合したのでした。その後、岩井氏と父が中心となって、桑原洋明、藤田玄播、岩河三郎、川崎優、名取吾郎、奥村一を含めた8名で作曲家グループ「ニューエイトの会」を結成し、毎年吹奏楽曲の新作発表コンサートを開催するようになります。そして、「邦人作品コンセール・リベルテの夕べ」(1975年11月10日、静岡市公会堂)、「ニュー・エイトオリジナルコンサート」(1976年6月6日、静岡市公会堂)に於いて、ニューエイトメンバーの新作をコンセール・リベルテが演奏を行ったのでした。
小津安二郎映画三部作について
小津監督の代表作『東京物語』は1953年、小津映画最初のカラー作品『彼岸花』は1958年、小津監督の遺作となった『秋刀魚の味』は1962年の作品です。父にとって思い出深いこの3作品は、江東青少年吹奏楽団の定期演奏会のために、吹奏楽用にアレンジしたものです。初演は1995年4月14日、会場は小津監督と父の生まれ故郷でもある、東京深川のティアラこうとう大ホールでした。当時70歳だった父は、指揮者で教育者でもある戸村明徳氏からの依頼を快諾し、小津映画音楽の吹奏楽アレンジ作品が誕生しました。この作品は、同年9月に航空自衛隊航空中央音楽隊によるCD録音が行われ、アルバム「斎藤高順吹奏楽作品集」の中にも収録されています。
コンセール・リベルテ第72回定期演奏会では、「ブルー・インパルス」「小津安二郎映画三部作」「オーバー・ザ・ギャラクシー」を採り上げていただきました。父の生誕100周年を記念して、これらの作品を演奏していただけたことは大変に光栄なことです。コンセール・リベルテの皆様には心より感謝申し上げます。