現代日本詩曲集/岩谷書店刊
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【作曲 塚谷晃弘】
豫感
(詩 村野四郎)
花の匂をおもい出すように
しばらく やさしいものが私にくる
それはかがやかしい樹々でもなく
姉妹たちでもない
測り知れない混乱の底から
なにをあこがれるのであろうか
古い切株から咲いて
薔薇がそこから匂うように
冬
(詩 菱山修三)
あたたかな日の当る枯草の上、あらい霜柱は破れ、
そのあたり一面、黄に透きながら柔らかにぬれてゆく、
この、朝の間の、しばらくの息の深さ、清さ、
なごやかさ。
古い本を讀むように、私はつつましく冬に向う、
物の芽の吹くのを待ちながら。
【作曲 荻原利次】
山彦小彦
(詩 井上昇平)
山彦小彦
お西の山から風の神飛んで来たきた
お山は寒い皆かえる
髭
(詩 北園克衛)
いら草が 山羊のおしりで温まる
若木に雲がからかう 夏の村で
村長さんの口髭が トンボの翅のように光る
牛
(詩 北園克衛)
正午になると 牛も堤に上がつて来る
農夫達はいつまでも 苗木にこだわつているが
この進行する岩は
菫のパンにタンポポのバタをぬつて 洒落た食事をする
荻原利次作品集/セロとピアノの二小品
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I. Melodie/メロディー
II. Caprocio/カプリチオ